blog_posts 2024年3月15日

第三章 陽だまりの記憶

#猫のしつけ #猫の食事
第三章 陽だまりの記憶
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土曜日の午後。
湊は、近所の公園のベンチに座っていた。

持参したコンビニのサンドイッチを食べながら、
ぼんやりと池を眺めている。
水面に、木々の影が揺れていた。

最近、部屋にいるのが息苦しくなることがある。
黒猫が来るようになってから、というわけではない。
むしろ、猫がいる時間の方が、呼吸が楽になる。
それが不思議で、少し怖くもあった。

「にゃあ」

声がして、振り向いた。
ベンチの背もたれの上に、白い猫が座っていた。
老猫のようだ。毛並みが少し黄ばんでいて、動きもゆったりとしている。

湊は手に持っていたサンドイッチを見た。
ツナサンド。
少しちぎって、猫の前に置いてみる。

猫は匂いを嗅いだが、食べなかった。
ただ、湊の隣に降りてきて、日向ぼっこを始めた。

「食べないのか」

猫は目を細めて、気持ちよさそうにしている。
陽の光が、白い毛を透かして輝いていた。

湊もサンドイッチを食べるのをやめて、
猫と一緒に陽だまりを感じることにした。
暖かい。
春の陽射しは、まだ少し弱々しいけれど、確かに暖かかった。

どのくらいそうしていただろう。
猫が立ち上がった。
湊を一度見てから、ゆっくりと歩き始める。

その後ろ姿を見送りながら、湊は思った。
この猫も、どこかで誰かを待っているのだろうか。
それとも、もう待つことをやめてしまったのだろうか。

公園を出て、アパートへの道を歩く。
途中、ペットショップの前を通った。
キャットフードの棚を眺める。
でも、結局何も買わなかった。

黒猫は、何も食べない。
水も飲まない。
ただ、そこにいるだけ。

部屋に戻ると、窓辺に黒い影があった。
外から、黒猫がこちらを見ていた。
窓を開ける。
猫は音もなく部屋に入ってきて、いつもの場所で丸くなった。

「おかえり」

湊がそう言うと、猫は片目だけ開けて、
すぐにまた閉じた。

夕陽が、部屋を橙色に染めていく。
白い猫のことを思い出しながら、
湊は黒猫の隣に座った。

二つの陽だまりの記憶が、静かに重なっていく。

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